MAC法(Maker And Cell method)を改良した、SMAC法(Simplified MAC法)によるNavier-Stokes方程式の離散化について説明していきます。この手法は流速と圧力を直接未知数として計算する手法です。MAC法ではPoisson方程式の右辺を計算するのに負荷がかかっていましたが、それを簡略化したのがSMACです。なので、基本的にMACとSMACは同じもののようです。ただし、計算時間はSMACのほうが短いです。
以下の内容は『流れ解析のための有限要素法』のpp.160-163を参考にしています。
- 作者: 中山司
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2008/04/01
- メディア: 単行本
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簡単のため二次元直交座標系で考えます。まず保存型のNavier-Stokes方程式は
です。連続式は
です。Navier-Stokes方程式と連続式を以下のように時間に対して離散化します。
圧力を陰的に扱う(n+1ステップの値を用いる)ところがMACとの違いです。このままではn+1ステップの値があり解けないので、以下のようにnステップの値を用いて中間速度(予測子)、 を計算します。
次に対応する運動方程式をそれぞれ引き算すると
を得ます。これが修正子にあたります。ただし
としています。これが圧力の補正量です。ここから と を連続式に代入します(n+1ステップにおいて連続式を満たすとする)。
これがSMACにおける圧力の補正量に関するポワソン方程式です。圧力そのものではなく、圧力の補正量になっている点がMACとの違いです。
計算手順は以下のように1~3の繰り返しとなります。
1. nステップでの流速 と 圧力 を用いて中間流速(予測子の式) を得る
2. 中間流速 を用いて圧力の補正量のPoisson方程式を解き、圧力の補正量 を求める
3. 圧力の補正量 を用いて、圧力と流速を補正(修正子の式)し、次のタイムステップの値 を得る
空間方向の離散化には、保存型をそのまま用いれば有限体積法を、非保存型を用いれば有限要素法や差分法を用いることができます。
SMAC法+中心差分による数値計算例です。
SMAC法+風上差分