数学とか語学とか楽しいよね

フランス語、ドイツ語、ロシア語、アラビア語、オランダ語、英語、スペイン語、ラテン語とか数学とか数値計算(有限要素法、有限体積法、差分法、格子ボルツマン法、数理最適化、C++コード付き)とか勉強したことをまとめます。右のカテゴリーから興味のある記事を探してください。最近はクラシックの名演も紹介しています。Amazonアソシエイトを使用しています。

【読書リンク】"Self-Help"(『自助論』)の英語版原著、ドイツ語版、フランス語版

Samuel Smiles(サミュエル・スマイルズ)著、"Self-Help"(『自助論』)の英語版原著、ドイツ語版、フランス語版のリンクです。中村正直が『西国立志編』として翻訳したことが有名です。色々な人が努力して成功したストーリーが詰め込まれています。今読んでもためになるのではないでしょうか。

どこかで読んだのですが、渡辺昇一は英語原著と並べて、"Self-Help"のドイツ語訳を読んでドイツ語を勉強したそうです。あとフランス語版の副題?が"ou Caractère, conduite et persévérance"(または性格、行為、忍耐力)というのも、この本の内容をよく反映していておもしろいですね。


英語版原著(Self-Help)
Self Help by Samuel Smiles - Full Text Free Book

ドイツ語版(Selbsthilfe)

フランス語版(Self-help: ou Caractère, conduite et persévérance)

【クラシック】「ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番」by Yefim Bronfman

実は私クラシック好きなんです!なので、何度でも繰り返して聞きたいと思うような名演のリンクを、備忘録的に載せていきたいと思います。


今回はYefim Bronfmanによる「ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番」です。

Bronfmanが巨体を揺らし、時には全体重をのせてラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を弾ききります。特に素晴らしいのはカデンツァ。会場が静まりかえり、ただ彼のピアノを聞いています。動画では10:00頃からです。本当に何度聞きなおしたことか覚えていません。ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番はいろいろな人の演奏を聞きましたが、彼が一番上手だと思います。

【ドイツ語】"Gretchen am Spinnrade"(糸をつむぐグレートヒェン)の解説をしてみます

Goetheゲーテ)の"Faust"(ファウスト)より詩、"Gretchen am Spinnrade"(糸をつむぐグレートヒェン)の解説をしてみます。これも"Erlkönig"(魔王)と同じく、Schubertシューベルト)が歌曲(リート)にしてくれています。憂いを帯びた名曲です。


Wikipediaによると「シューベルトにとって初めてのゲーテ歌曲であるとともに、この曲を以てドイツリートが誕生した、と評される。(中略)グレートヒェンは紡ぎ車を回しつつ、ファウストとその口車を思い浮かべて口ずさんでいる。ピアノ伴奏の反復リズムは、歌詞に応じて紡ぎ車が速まったり遅くなったりするさまや、グレートヒェンの気も狂わんばかりの昂奮を描写し、恋する娘の動揺や、悪魔の誘惑を効果的に暗示している。」とのことです。


ファウストに恋するグレートヒェンの苦悩が描写されています。韻を踏んでいることに注意して読んでいきましょう。


(原文1)
Meine Ruh' ist hin,
mein Herz ist schwer;
ich finde sie nimmer
und nimmermehr.

(訳)
私の安らぎは去り、
心は重い。
私が安らぎを見出すことは決してない
二度と。

(解説)
"Ruh'"は"Ruhe"です。よく韻文では"e"が省略されます。


(原文2)
Wo ich ihn nicht hab',
ist mir das Grab,
die ganze Welt
ist mir vergällt.

(訳)
彼がいない所は、
私にとって墓場、
世界のすべてが
だいなし。

(解説)
"hab'"は"habe"です。
"wo"は「~するところではどこであれ」という用法があります。詳しくは信岡資生、藤井啓行著『中級ドイツ語の研究』のp.46-47を見てください。そこの例文には、"Wo viel Licht ist, ist starker Schatten!"(光の多きところ影も濃い。(Goethe))とあります。
"vergällen"は「だいなしにする」です。


(原文3)
Mein armer Kopf
ist mir verrückt,
meiner armer Sinn
ist mir zerstückt.

(訳)
私のかわいそうな頭は
おかしくなり、
私のかわいそうな心は
粉々になった。

(解説)
"verrückt"は「気の狂った」です。
"zerstückt"は「粉々になった」です。


(原文4)
Meine Ruh' ist hin,
mein Herz ist schwer,
ich finde sie nimmer
und nimmermehr.

(訳)
(原文1)の繰り返し。


(原文5)
Nach ihm nur schau' ich
zum Fenster hinaus,
nach ihm nur geh' ich
aus dem Haus.

(訳)
ただ彼を追って
窓の向こうを見る、
ただ彼を追って
外へ出かける。

(解説)
"schau'"は"schaue"です。
"geh'"は"gehe"です。


(原文6)
Sein hoher Gang,
sein edle Gestalt,
seines Mundes Lächeln,
seiner Augen Gewalt,

(訳)
彼の立派な歩き方、
彼の尊い姿、
彼の口元の笑み、
彼の眼の力、


(原文7)
Und seiner Rede
Zauberfluß,
Sein Händedruck,
und ach! sein Kuß!

(訳)
そして彼のお話の
魔法のような流れ、
彼の手を握る力、
そして、ああ!彼のキス!

(解説)
"seiner Rede"は2格で"Zauberfluß"にかかります。


(原文8)
Meine Ruh' ist hin,
mein Herz ist schwer,
ich finde sie nimmer
und nimmermehr.

(訳)
(原文1)の繰り返し


(原文9)
Mein Busen drängt
sich nach ihm hin,
Ach dürft' ich fassen
und halten ihn,

(訳)
私の胸は
彼を求めて押し進む、
ああ、彼を捕まえて
抱きしめてよいならば、

(解説)
"der Busen"は「(女性の)胸」です。
"dürft'"は"dürfte"です。接続法です。
"dürft' ich fassen und halten ihn"は"Wenn ich ihn fassen und halten dürfte"の倒置ではないでしょうか?(厳密に言うと次の"Und küssen ihn, so wie ich wollte"まで"dürfte"に含まれると思います)つまり「彼を捕まえて、抱きしめてもよいならば」。


(原文10)
Und küssen ihn,
so wie ich wollt',
an seinen Küssen
Vergehen sollt'!

(訳)
そして彼に、
望むままにキスしてもよいならば、
彼とキスしながら
消えてしまいたい!

(解説)
なので全体としては"Wenn ich ihn fassen, halten und, so wie ich wollte, küssen dürfte"となるのではないでしょうか?
"wollt'"は"wollte"です。接続法です。
"sollt'"は"sollte"です。接続法です。"ich"の省略です。
"vergehen"は「消え去る」です。


ドイツ語を勉強するとこんなにも美しいリートを楽しむことができるようになります!語学とはかくも素晴らしいものなのです。


参考
糸をつむぐグレートヒェン - Wikipedia

中級ドイツ語の研究 (1972年)

中級ドイツ語の研究 (1972年)

「ファウスト第1部」を読む

「ファウスト第1部」を読む

ファウスト』の名場面に関して、ドイツ語と日本語が対訳になっておりとても便利です。p.144-147に『糸をつむぐグレートヒェン』が載っています。

【ドイツ語】『ドイツ語、もっと先へ!』【12冊目】

渡辺克義、アンドレアス・マイアー著『ドイツ語、もっと先へ!』を読み終わりました。総ページは179です。CDもついています。前書きによると、この本を丹念に学習すれば、独検2級に合格でき、センター試験では9割以上確実に得点する力がつく、とあります。


ドイツ語、もっと先へ!

ドイツ語、もっと先へ!


この本は初級文法を終わらせた人を利用者として想定しているようです。とはいえ著者の興味(言語学、落語、ポーランド文学)にかなり寄った話題を読本にしているため単語のレベルが高く、いきなりこの本に取り掛かると辞書をたくさんひかねばならず苦しいでしょう。かくいう私がそうでした。いろいろなドイツ語の中級本を読み、ようやく本書を読み終えました。


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この本は東大生の健を主人公とする物語を読ませる第一部と、東大入試の過去問を解く第二部から構成されています。第一部では、物語を読みつつ楽しく語彙の増強や文法の復習ができます。話題としては言語学あり、ポーランド文学あり、落語あり、と普通のテキストとは一線を画した内容となっています。合わない人にはとことん合わないと思いますが、はまるととても楽しく読み進められます。特に、落語『芝浜』をドイツ語で鑑賞できる、というのはかなり大きいことです。


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第二部は東大の入試問題の過去問をひたすら解いていきます。1986年から2013年までの28年分の問題ⅣとⅤが収録されています。いわゆる「差し替え」の対策用です。回答もきちんとついているので、東大ドイツ語受験の方は必読でしょう。東大受験生以外の人は、東大入試問題のレベルがわかりますし、読んでいてはっとするような名文もあるので一読に値します。

【語学学習】どのレベルまで外国語を勉強すればよいか?-『外国語上達法』から

読む・書く・話す・聞く、と四拍子揃うまである外国語を勉強するには非常に時間がかかります。恐らく10年単位でかかるのではないでしょうか。人生は有限なので、いくつもの外国語をそのレベルまで引き上げるのは無理だし無駄です。そこで、どのレベルまで外国語を勉強すればよいか?という問題が出てきます。


この問いに対して、非常に印象的な示唆を与えるのが千野栄一著『外国語上達法』のチェコ人の技師のエピソードです。彼には日本語で書かれた化学の論文を訳せるだけの語学力が必要でした。つまり発音はまったく不要で読むことができればよい、ということです。そして見事に1年3ヵ月後には論文が無理なく訳せるようになったということです。ちなみに彼は同様の考えで英・独・仏・露といった言語を習得済みであったそうです。

外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)

外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)


当時の私にとってこのエピソードは衝撃的でした。というのも当時の私は外国語は四拍子揃ってできなければならない、という根拠のない固定観念があったからです。


どのレベルまで外国語を勉強すればよいか?という問題は完全に個人の問題です。一人一人が考えなければなりません。私の場合、ドイツ語については「読む」だけにしようと考え、学習を続けています。ドイツ語を学ぶ目標は、「ゲーテファウストやヘッセの作品を読むこと」なので他の三技能にはまったく投資していません。その浮いた分で、他にも読める言語を増やしていきたいです。文学作品を読むのが目標なので、様々な形容詞や古風な構文もしっかり勉強するように心がけています。


みなさんももう一度、何故自分がその言語を勉強するか考えてみてください。そうすれば自然とどのレベルまで勉強すればよいのかわかると思います。そうなれば何をどのように勉強すればよいか、ということが明らかになってくると思います。

【オランダ語】『オランダ語の基礎―文法と練習』

クレインス桂子、クレインスフレデリック、河崎靖著『オランダ語の基礎―文法と練習』を読み終わりました。総ページは241です。CDもついています。結論から言うと、英語が得意な方やドイツ語などのゲルマン語を既習の方はオランダ語学習のために本書を読むのがベストです。

オランダ語の基礎―文法と練習

オランダ語の基礎―文法と練習


この本は初級オランダ語文法を平易に説明している良い本です。この本を読めば初級文法は卒業できます。十分でしょう。20課から構成されています。各課は文法の説明、テキスト(読本)、文法の練習問題、作文練習(和文オランダ語訳)から構成されています。テキストの所では未知の単語が載っていますが、結構漏れがあったような気がします。また蘭和・和蘭の単語集もついており、しばらく辞書を買わないで学習することができます。これは意外と大事なポイントで、続けるかどうかわからない言語のためにわざわざ高価な辞書を購入するのはリスキーです。なので初級のうちは語彙集がついており、辞書が要らない教科書で勉強するのがベストだと私は思います。初級を抜けたら辞書を買えばよいのです。


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この本のよいところは無駄を省いたシンプルなレイアウトながらとっつきにくくない点です。情報を盛り込もうとしすぎるとどうしてもレイアウトがごちゃごちゃしてきます。しかし、本書は初級文法として必要な部分にのみ焦点を絞っているので情報過多に陥ることがありません。シンプルなレイアウトにするととっつきにくくなるものですが、何故か本書はそうではありません。これは恐らく、適切な行間とマージンの広さ、です・ます調の文体、本質を見るために十分な難しすぎない例文、あたりに理由があるのではないかと考えています。本書は語学教科書の理想形と言ってもよいでしょう。今後何か書く時の参考になりそうです。


私はドイツ語既習だったので三日で読み終えることができましたが、本当に初心者の方は『オランダ語のしくみ』か『ニューエクスプレスオランダ語』から始めるほうが無難かもしれません。ドイツ語とオランダ語は文法、語彙ともに酷似しています。例えば、どちらも第二位に動詞がきますし、分離動詞もあります。

オランダ語のしくみ

オランダ語のしくみ

ニューエクスプレスオランダ語

ニューエクスプレスオランダ語


また続きとして『中級オランダ語 表現と練習』があります。私も現在これを読んでいます。

中級オランダ語 表現と練習《CD付》

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