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【ナヴィエ・ストークス方程式】吉田善章『ナヴィエ-ストークス方程式の数理と乱流モデル』抜書

はじめに

今回は吉田善章『ナヴィエ-ストークス方程式の数理と乱流モデル』から抜き書きしていこうとおもいます。「抜書」の部分は下段や文中のカッコの中以外全て抜き書きになっています。ご注意ください。「アイデア」は自分の言葉で内容を書き直しています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspf/78/8/78_8_788/_pdf

抜書

NS 方程式は非圧縮な流れを考えるので,「渦」の運動を記述することが中心的な問題である.


右辺第1項は「渦管の引きのばし」を与える項である.
(式(5)の渦度方程式に対して)


2次元の場合には,渦度は(x,y)平面に垂直なz方向を向いたベクトルの成分と見なすことができ,擬スカラー場U によって表わされる.よって,渦管の引きのばし項は0となる.
(式(5)の渦度方程式に対して)


非圧縮流は,流れ関数(流れのハミルトニアン)Hを使って(中略)書くことができる.(非粘性流れの場合)(5)はLiouville 方程式(式(6))に帰着する.


3次元の場合には,渦管の引き伸ばし項が消えない.このことが,2次元と3次元を分ける決定的な違いとなる.


2次元非粘性流の方程式(中略)に対して,これら(エネルギーとエンストロフィー)はともに不変量であることが容易に示せる.


数学では,このような関係式を「a priori 評価」という.解の「具体的な形」を知らなくても,解が必ずみたさなければならない評価式という意味である.


一方3次元の場合,エネルギーEについては同様の関係が成り立つが,エンストロフィー の方は,まったく様子が異なり,この種の関係式は導けなくなる.渦管の引き伸ばし項が加わるからである.


NS 方程式の数学理論では,3次元の場合の「解の存在」が未解決の問題として残されている.これは,エンストロフィー の上限を決める(8)のような関係式(アプリオリ評価)が上手く作れないからである.


エネルギーEの有界性だけによって約束されるのが,いわゆる「弱解」である.弱解は弱収束列を作るので,例えばエネルギー評価(7)でも=が成り立たなくなって<=に後退する.でも,この向きの不等号なら,有界性がいえているから十分ありがたい.この辺りの論理の組み方が,関数解析の醍醐味である.しかし,弱解というのは無限次元ベクトル空間をあつかうトリックが生み出した人工物に過ぎないのかもしれない.


きちんと微分方程式を満たす解(古典解,あるいは正則解という)を作ろうとすると,もっとちゃんとした収束を議論しなくてはならない.このときエンストロフィーの有限性が必要となる.2次元では,したがって古典解が存在することが証明できるのである.


3次元の場合は,エンストロフィーの大きさが,長時間にわたって有限に抑えられる保証がない(まだ見つかってないともいえるし,原理的にないのかもしれない).物理的にいうと,非線形項(渦管の引きのばし項)が生み出す渦の発生率が粘性によるエンストロフィーの散逸率を超えるかどうかということが問題である.3次元の場合には,渦管の引きのばしによって渦が強められるので,これが粘性散逸を卓越するかもしれない.2次元流では,渦管の引きのばし効果が無い(つまり非線形効果が弱い)ので,粘性散逸の方が強く働く.このために,渦の強さが発散して微分できなくなるということが起きないことが保証できるのだ.


「乱流」という場合は,ある種の「準定常状態」を仮定している.つまり,渦の生成と散逸が平均的にバランスした状態である.前項で述べたように,NS方程式の数理の立場からは,エンストロフィーが準定常値をもつかどうかは,3次元の場合には未解決問題である.しかし,現実の現象を考えるならば,このようなバランスが存在すると考えざるをえない.

イデア

 L^2 から  L_{\sigma}^2 への正射影を考える。

・正射影を作用させ発展方程式を導く。

・近似列を作り、コンパクト性により収束することを示す(不動点定理)。コンパクト性を言うのにアプリオリ評価が必要。