数学とか語学とか楽しいよね

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【流体力学】『高校数学でわかる流体力学』

流体力学の入門書である、竹内淳 著『高校数学でわかる流体力学』を読み終わりました。今まで流体力学について断続的に勉強してきましたが、体系的にやったことはなかったので、その最初の一歩として読みました。ページ数は249ページです。文字がびっしりつまっているわけではないので、私は2日で通読できました。ベルヌーイの定理から始めて、二次元の渦無し非圧縮性非粘性流の理論を学び、二次元翼理論を解説し、ナヴィエ・ストークス方程式の導出までやります。非常に意欲的な著作でした。特に、二次元翼理論のわかりやすさは目を見張るものがありました。今までにも、ちょこちょこ複素関数を使った二次元流体理論を勉強しようとしたことがあるのですが、いつも挫折しもやもやしていました。しかし、この本を読み、かなりすっきりしました。これで他の複素関数を使った二次元流体理論の本が読めるようになりました。複素関数を使った二次元流体理論を勉強したい方におすすめの入門書です。ただし、ナヴィエ・ストークス方程式の粘性項の導出はわかりやすいものではありませんでした。そもそもその話題は入門書には荷が重いのかもしれません。全体の難易度としては、丁寧に数式変形を追っていけば読める本です。前提知識としては多変数の微積分、ベクトル解析、複素解析の初歩あたりでしょうか。高校生が読むのには少々しんどいですが、理工系大学生の2年生ぐらいなら十分に読めます。

高校数学でわかる流体力学 (ブルーバックス)

高校数学でわかる流体力学 (ブルーバックス)

以下では目次を示し、各章についてコメントや感想を述べていきます。

目次
第1章 ベルヌーイの定理とはなんだろう 
第2章 流体はどのような式で表されるか
第3章 ベルヌーイの定理の数式を導く
第4章 流れ関数と速度ポテンシャル
第5章 複素速度ポテンシャル――2次元流体の理論
第6章 円のまわりの複素速度ポテンシャル
第7章 ブラジウスの公式とクッタ・ジューコフスキーの定理
第8章 2次元翼理論――ジューコフスキー変換
第9章 粘性のある流体とナビエ・ストークス方程式

第1章 ベルヌーイの定理とはなんだろう

ベルヌーイの定理とはどんな定理か、どのように応用されているか、などを解説します。気体分子運動論によるベルヌーイの定理の説明が斬新で関心しました。また、動圧と静圧の説明も明快でした。

第2章 流体はどのような式で表されるか

連続式とオイラー方程式をスタンダードに導出します。後々学生を苦しめる「循環」、「渦度」、「ストークスの定理」がテンポ良く説明されます。この本を読んで、私はやっと循環を理解しました。

第3章 ベルヌーイの定理の数式を導く

オイラー方程式を積分してベルヌーイの定理を導出します。ただ、この説明は一般的な流線に沿った議論ではないので、他の本を参照する必要があります。おすすめは河村哲也 著『基礎からの流体力学!』です。

基礎からの流体力学! (コンピューター環境科学ライブラリー)

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第4章 流れ関数と速度ポテンシャル

後々学生を苦しめる「流れ関数」と「速度ポテンシャル」が出てきます。この二つは定義が似ていてややこしいのです。流れ関数と速度ポテンシャルの意味が丁寧に説明されます。速度ポテンシャルを周回積分すると循環になります。流れ関数は流量をあらわすのに使われ、流れ関数が一定である位置をつなぐと流線になります。このあたりの話が混乱している方にはこの本をおすすめします。私もこの本を読んで、流れ関数と速度ポテンシャルの関係を整理できました。

第5章 複素速度ポテンシャル――2次元流体の理論

流れ関数と速度ポテンシャルをもとに複素速度ポテンシャルを考えます。このあたりから複素関数の知識が必要になってきます。正則関数と二次元の渦無し非圧縮性非粘性流が一対一に対応していることを示し、様々な正則関数がどのような流れ場になるのかを見ていきます。特に、二重湧き出しの説明はわかりやすかったです。

第6章 円のまわりの複素速度ポテンシャル

円柱のまわりの流れを考えます。複素速度ポテンシャルを求め、円柱に働く揚力と抗力を計算していきます。ここは私が他の本を読んでいた時につまった箇所ですが、すんなり理解できました。ゴリゴリ計算して、円に働く揚力を与えるクッタ・ジューコフスキーの定理を示します。その関連でマグナス効果も紹介してくれます。一方、抗力についてはゼロになることが示されます。これがダランベールの背理です。完全流体では流れ中の物体は押す力を受けないのです。自分で計算して導くと感慨深いです。

第7章 ブラジウスの公式とクッタ・ジューコフスキーの定理

この章ではある物体まわりの流れの複素速度ポテンシャルが与えられた場合の揚力、抗力、モーメントを与えるブラウジウスの公式を示します。結構ハードな計算です。

第8章 2次元翼理論――ジューコフスキー変換

いよいよこの本のメインディシュ、2次元翼理論です。まず、ジューコフスキー変換が紹介され、その性質が調べられます。そして、円柱まわりの流れ場をジューコフスキー変換することにより、翼まわりの流れ場が得られることがわかります。

第9章 粘性のある流体とナビエ・ストークス方程式

ナヴィエ・ストークス方程式が導出されますが、この本の粘性項の説明はわかりづらいです。そもそもその話題は入門書には荷が重いのかもしれません。なので、他の本を参考にすることをおすすめします。例えば、清水昭比古 著『連続体力学の話法』がおすすめです。

連続体力学の話法-流体力学,材料力学の前に

連続体力学の話法-流体力学,材料力学の前に


まとめとしては「複素関数を使った二次元流体理論を勉強したい方におすすめの入門書」、「循環、渦度、ストークスの定理、速度ポテンシャル、流れ関数で混乱している方におすすめの入門書」となります。私個人としては、完全流体を勉強することで、流線が剥離する、しないという意味がやっとわかりました。非常に良い本でした。