数学とか語学とか楽しいよね

フランス語、ドイツ語、ロシア語、オランダ語、英語、スペイン語、ラテン語とか数学とか数値計算(有限要素法、有限体積法、差分法、格子ボルツマン法、数理最適化、C++コード付き)とか勉強したことをまとめます。右のカテゴリーから興味のある記事を探してください。最近はクラシックの名演も紹介しています。noteにも書いています。https://note.mu/kumag_min

【有限要素法】『よくわかる有限要素法』

有限要素法の解説書である、福森栄次著『よくわかる有限要素法』を読み終わったので、内容に関して書いていきたいと思います。ページ数は304でそれなりに読みごたえがあります。私は2日ほどで通読しました。初心者向けとのことですが、本当の初心者には通読できないと感じました。一度有限要素法の基礎を勉強した人が、知識の整理やより高度な内容の学習に用いるのに適している本だと思います。また、参考文献も何故かほとんど洋書ばかりで不親切です。入手しやすく参照しやすい和書を参考文献に挙げるべきではないでしょうか。

よくわかる有限要素法

よくわかる有限要素法

以下では目次を示し、各章についてコメントや感想を述べていきます。

目次
第1章 有限要素法の概要
第2章 有限要素法で使う数学
第3章 有限要素法で数値計算法と代数学
第4章 最も簡単な有限要素法
第5章 1次元領域を要素で分割
第6章 要素ごとの積分
第7章 新しい重み関数による有限要素法
第8章 変分法
第9章 1次元2次要素
第10章 非線形微分方程式の解き方
第11章 2次元ラプラス方程式の解き方
第12章 パラメトリック要素の特徴と利用例の紹介

第1章 有限要素法の概要

有限要素法の理解を深める範囲内で有限要素法の歴史が説明されます。あまり関係のない小話などは無く、簡潔にまとまっています。

第2章 有限要素法で使う数学

微分積分から説明してくれます。有限要素法の記述で用いられるベクトル、マトリクス、テンソルについてはくどいぐらい丁寧に説明されていてとてもよいです。さらに、グリーンの公式をきちんと例を挙げながら説明しているのがグッドです。

第3章 有限要素法で数値計算法と代数学

数値積分ガウスルジャンドル法)の使い方がとてもわかりやすいです。おすすめの箇所のひとつです。ベクトルとマトリクスの演算にここで慣れておくと他の有限要素法の本を読む際に非常に役立ちます。最後に連立一次方程式の解法として「ガウスの消去法」を説明します。本ブログにもガウスの消去法のC++コードがあります。

この本では連立一次方程式の解法に関する説明はほとんどないので他の本で勉強する必要があります。例えば、陳小君、山本哲朗著『英語で学ぶ数値解析』、仁木滉、河野敏行著『楽しい反復法』や二宮市三編『数値計算のわざ』がおすすめです。

英語で学ぶ数値解析

英語で学ぶ数値解析

楽しい反復法

楽しい反復法

数値計算のわざ

数値計算のわざ

第4章 最も簡単な有限要素法

この章は無いほうが理解が深まるのではないかと私は思います。おそらく著者はRitz法を説明して有限要素法へとつなげようと考えているのでしょうが初学者にとっては余計な負担になってしまいかねません。Ritz法は現在使われていない(と思う)方法なので、無理に説明する必要はないと私は考えます。もっとも変分法を勉強するとRitz法は普通に出てきますが。私も最初この章を読んで理解に苦しみました。

第5章 1次元領域を要素で分割

この章と次の章が有限要素法(1次元)の肝です。よく読みましょう。ベクトルやマトリクスもきちんと成分が表示されていてとても助かります。数値例もあるので自分で実装して答え合わせをすることができます。これは大事なことです。


第6章 要素ごとの積分

この章と前の章が有限要素法(1次元)の肝です。よく読みましょう。マトリクスの足し込みの説明です。ここは初心者には難しいので何回も読んでください。わかってしまえばどうということはありません。

第7章 新しい重み関数による有限要素法

この章は無いほうが理解が深まるのではないかと私は思います。著者の言いたいことはわかります。重み関数の任意性によって有限要素法の式が導かれるということを説明したいのだと思いますが、これではわからないのではないでしょうか。このことをうまく説明した本に中山司著『流れ解析のための有限要素法入門』があります。1次元の有限要素法の解説は『流れ解析のための有限要素法入門』のほうがわかりやすいです。ただ、後で述べますが2次元の有限要素法の解説は『よくわかる有限要素法』のほうがわかりやすい部分もあります。

流れ解析のための有限要素法入門

流れ解析のための有限要素法入門

第8章 変分法

この本の大きな特長のひとつとして、有限要素法が変分法に由来する、ということをきちんと意識させようとしていることがあげられます。この章もそうした目的意識で書かれていますが、あまりわかりやすくはありません。変分法と有限要素法のつながりを理解するためには、緒方秀教著『変分法』、戸川隼人著『変分法と有限要素法』や寒野善博、土谷隆著『最適化と変分法』などの専門書を読んで勉強するのがよいと私は思います。

変分法

変分法

変分法と有限要素法 (現代応用数学の基礎)

変分法と有限要素法 (現代応用数学の基礎)

基礎系 数学 最適化と変分法 (東京大学工学教程)

基礎系 数学 最適化と変分法 (東京大学工学教程)

第9章 1次元2次要素

1次元2次要素の説明です。形状関数に慣れていれば非常に理解しやすい記述です。

第10章 非線形微分方程式の解き方

この章もあまりよくないと思います。きちんと計算の流れを離散化した式を示しながら説明してほしかったです。いかに線型化するか、どのように反復を入れるのか、といった説明が欲しいです。ただ、非線型の場合の解き方を説明した本はほとんどないので貴重です。


第11章 2次元ラプラス方程式の解き方

この章が有限要素法(2次元)の肝です。よく読みましょう。かなりわかりやすく記述してあります。おすすめの部分のひとつです。拡散係数が等方性を持つ場合だけでなく(単位行列)、異方性を持つ場合(対称行列)の説明もされており勉強になります。有限要素法の場合、1次元と2次元の場合で溝があるので、何回も読みましょう。


第12章 パラメトリック要素の特徴と利用例の紹介

この章を読んで私は初めてアイソパラメトリック要素を理解出来ました。とてもおすすめです。形状関数を用いた簡潔な記述で非常に読みやすいです。さらに2次元の応用例もたくさん載っています。特に印象に残ったのがポイントソース(δ関数)の扱いです。知りませんでした。


まとめとしては「『よくわかる有限要素法』は一度有限要素法の基礎を勉強した人が、知識の整理やより高度な内容の学習に用いるのに適している本であり、4、7、8章はあまりよろしくないが、1次元の有限要素法に関しては5、6章を、2次元の有限要素法に関しては11、12章を読むとよい」となります。偉そうに批評してきましたが、本書を読んで非常に勉強になりました。本書は有限要素法を本当に理解したいと考えている人にとって有益な本です。読んで損することはありません。